当社では、2020年に一部取締役によるパワーハラスメントに該当する可能性が相当程度認められる行為が発覚し、コンプライアンス上の課題および組織運営上の課題が明らかになりました。
本件に関しましては、旧経営陣のもと2020年3月18日に設置された、社外監査役、社外取締役および弁護士からなる外部調査委員会(以下「当委員会」といいます)が、2020年5月21日付調査報告書(以下「報告書」といいます)において、当委員会の判断を示しております。
報告書の概要は、次のとおりとなります。
- 一部取締役によりパワーハラスメントに該当する可能性が相当程度高い行為が行われ、
その他常勤取締役が、一部取締役の上記行為を看過してきたこと - 内部通報制度が周知されておらず、またその信頼性が低いこと
- ハラスメント防止に向けた具体的な対策が不充分であったこと
なお、詳細については、別紙「外部調査委員会調査報告書要旨」をご参照ください。
本日2020年8月6日に公表いたしました「新経営方針策定のお知らせ」においても、今後の取り組みとして、内部通報制度の改革、ハラスメント研修の実施、新組織体制の構築・運営等を進めていく、としておりますが、当社はこの当委員会指摘を真摯に受け止め、今後の組織運営の改善に取り組んでまいります。
今後とも、ご理解、ご支援の程よろしくお願い申し上げます。
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別紙:外部調査委員会調査報告書要旨
1.調査概要
〇調査委員会構成
- 社外監査役、社外取締役および弁護士からなる外部調査委員会
〇調査事項(調査スコープ)
- 当該取締役が駅探の従業員にパワーハラスメントを行ったか
- 本件パワーハラスメントに関する他の常勤役員の対応及び内部通報制度の機能状況
〇調査期間
令和2年3月25日から令和2年5月20日
〇調査方法
当委員会は、調査期間において、合計4回の委員会を開催した。
その他、当委員会が実施した具体的な調査の内容は以下のとおりである。
①全従業員を対象とするアンケート調査及びその結果の分析
②常勤役員からのヒアリング
③従業員、退職者からのヒアリング(合計13名)
④当該取締役からのヒアリング
⑤駅探から開示された資料(座席表、組織図、退職者面談記録、内部通報窓口業務管理規則、
ハラスメントの防止等に関する規程、平成17年度以降の退職者一覧表)の分析・検証
2.当委員会の判断
〇当該取締役の言動に対する判断
アンケート結果、ヒアリングにより、当該取締役の言動に関する相当程度具体的な申告が認められるが、当該取締役の言い分とは相違する点もある。本件に関しては録音等の客観的証拠がないことから、事実認定に際しては、被害者の他、複数の裏付け証言があるか、当該証言が信用できるか、という観点から、慎重に検討を行った結果、当委員会としては、いくつかの問題言動があったものと考えている。
その内容については、アンケート・ヒアリングの結果、日時、場所なども特定した上で、相当程度詳細なやりとりについて複数人から証言が行われており、その証言内容も具体的で信用できる。また、当該取締役自身のヒアリングにおいても、そのような言動を明確に否定するまでには至っていないため、上記各問題言動が存在したことが合理的に推認される。
厚生労働省の見解によれば、職場における「パワーハラスメント」とは、職場において行われる
i) 優越的な関係を背景とした言動であって、
ii) 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、
iii) 労働者の就業環境が害されるものであり、
上記i)からiii)までの要素を全て満たすものをいう。
この点、本件について、i)に関しては、取締役という立場であり、日頃からの従業員に対する言動や社内において当該取締役は絶大な地位にあるとの複数の従業員の証言に照らしても、当該取締役が従業員との関係において、優越的な立場にあったことは当然に認められる。
次に、ii) iii)についても、当該取締役による叱責には、機嫌が悪い時などに理不尽に叱責する、という証言がある一方で、叱責には一定の理由(業務上の必要性)があるとの証言も複数認められる。よって、当該取締役による叱責の全てが、何の理由もないまま理不尽に行われていたとは認められない。しかし、叱責の方法として相当ではない不適切な言動を行っていたことも推認される。
ヒアリング結果から、従業員・元従業員のヒアリング対象者の全員が、当該取締役の言動には問題があるとの認識を共通して有している。この点、当該取締役自身も、自身の言動に行き過ぎたところがあったことを認めており、これらに照らしても、当該取締役の言動は、ii)業務上の相当な範囲を超えたものであり、iii)周囲が萎縮するような、労働者の就業環境を害する態様であったものと考えられる。
以上から、当該取締役による言動は、その方法として相当な範囲を超えた部分があると言わざるを得ず、当該相当な範囲を超えた部分について、パワーハラスメントに該当する可能性が相当程度認められるものと判断する。
〇当該取締役の言動に対する他の常勤役員の対応、内部通報制度の機能状況等について
<他の常勤役員の対応>
社長をはじめ他の常勤役員も、一部の役員においては、当該取締役の部下に対する厳しい指導、叱責については、ある程度把握しており、また、把握し得る立場にあったものと思われるが、ハラスメントとまでの認識は有していなかったとのことである。このため、これまで、他の常勤役員が当該取締役に対して、ハラスメントに関する注意や、部下の指導方法等に関する注意、その他の指摘を行った事実、取締役会などで当該取締役の言動が問題視された事実は認められない。
なお、従業員からのヒアリングによると、従業員としては、社長ら他の常勤役員も、当該取締役の問題言動は当然に認識していたはずとの認識を持つものが多く、誰も当該取締役にモノを言う人がおらず、当該取締役の言動を規制できる人が社内には社長を含めて誰も存在しない、との印象を強く抱いているようであった。
<内部通報制度の機能状況>
内部通報窓口業務管理規則によれば、駅探には、「総務人事部部長」、「常勤監査役」「社外の弁護士」という3つのルートで内部通報窓口が設置されている。
しかし、アンケートの結果では、最も従業員に認知されている総務人事部長のルートでさえも、回答50人中、24人という認知度であり、内部通報窓口が従業員に周知されているとは決して言えない状況である。
なお、アンケートでは、今まで、ハラスメントに関する相談をしたいと思ったことがありますか、という質問に対して、「はい」と答えた人数は7人いるが、実際には通報に至っておらず、「いいえ」と答えた人数は37人と多数であった。アンケートでは「内部通報とはいえ、社内の人間が対応するため、相談しなかった。」等の意見がみられ、内部通報制度の「周知」の問題に加え、「信頼性が低い」という問題があることも見て取れる。
<旧体制のハラスメント防止対策について>
駅探において、これまでハラスメント防止に向けた具体的な対策が講じられてきたか、という点について、アンケート結果では、「あなたは、駅探でハラスメント防止対策(社長のメッセージ、社内報、研修の実施等)が実施された記憶はありますか。」という質問に対し、
「はい」と答えた人数 11人
「いいえ」と答えた人数 39人
となっており、ハラスメント防止対策が講じられていない、という認識の従業員が大多数である。また、ヒアリングの結果を見ても、駅探が、これまで積極的にハラスメント防止対策に取り組んできた事実は認められなかった。
以上
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※この報告書要旨は、調査対象者のプライバシーへの配慮などの理由のため、個人が特定できる表現を削除するなど報告書原文を部分的に編集しております。